刺身用の柵を選ぶとき、まず見るのは血合いの色だ。
ただし鮮魚コーナーの照明の下では判断できない。売り場の照明は赤みを強調するように作られていて、そこで見た色は実際より良く見える。
一度パックを手に取って、通路の普通の照明の下まで持って行く。それだけで判断の精度が変わる。これは誰でも今日からできて、しかもほとんどの人がやっていない。
血合いが茶色いのは、時間が経ったサイン
色を見るとき、注目すべきは黒っぽさより茶色っぽさだ。
赤黒いのは魚種による個体差もある。だが茶色は酸化が進んだ結果で、時間が経っている証拠になる。鮮やかな赤から、くすんだ茶色へ。この変化を覚えておけばいい。
脂は、皮と血合いの間を見る
脂の乗りを知りたいなら、皮と血合いの間を見る。白い層が脂で、これが厚いほど脂が乗っている。
さらに、血合いの中にまで白い差しが入っていれば、それは最高の状態だ。同じ売り場に並ぶ同じ魚でも、この差ははっきり出る。
一尾なら、瞳と体型
一尾売りの魚で一番わかりやすいのは目の透明度だ。澄んでいるか、濁っているか。濁っていたら時間が経っている。
もう一つ、魚種を問わず通用する指標がある。
小顔で、体高があり、全体に膨らんでいるもの。
これはどの魚でも当たりだ。同じ売り場に並ぶ同じ魚の中から、この形をしているものを選べば、まず外さない。頭が大きく見えて身が薄いものは、その逆になる。
「朝獲れ」を信じすぎない
「本日入荷」「朝獲れ」というPOPは、目安にはなる。ただし鮮度の保証ではない。
大型船の場合、獲れてから何日も船上で経過したあと港に水揚げされる。それでも表示上は朝獲れになる。
嘘ではない。だが消費者が想像する「今朝獲れた魚」とは意味が違う。POPを見るより、上に書いた血合いと目を自分で確認する方が確実だ。
曜日で、鮮度は変わる
市場が休みなのは水曜、日曜、祝日。
この日に並んでいる魚は、前日以前に仕入れたものになる。鮮度は確実に落ちる。
刺身で食べたい日を、この曜日に当てない。それだけで失敗はかなり減る。逆に言えば、市場が動いた翌日を狙えばいい。
皮引きを見れば、その店の腕がわかる
柵を見るとき、皮を引いた面にも注目してほしい。
身まで削れて凸凹になっているものは、技術がないか、包丁が研げていないかのどちらかだ。丁寧に引かれた柵は、面が平らで滑らかになる。
魚そのものの質とは別の話だが、その店が魚をどう扱っているかは表れる。同じ売り場で買い続けるなら、見ておいて損はない。
「解凍」表示は、避けなくていい
解凍表示を嫌う人は多い。だが一概に避ける必要はない。
安い時期に仕入れて冷凍したものや、売り切れなかった分を冷凍したものが並ぶ。品質が低いから冷凍されたわけではない。
ただし生食のリスクは上がるので、用途で判断を分けるのがいい。刺身用に買うか、加熱用に買うか。価格が安いぶん、濃いめの味付けで調理すれば十分においしく食べられる。
甘塩と辛口は、ただの塩分濃度
意外と知られていないが、切り身の「甘塩」「辛口」は塩分濃度の差でしかない。
鮮度でもグレードでも品質でもない。好みと用途で選べばいい。甘塩の方が上等、ということはない。
「訳あり」と「切り落とし」は違う
似たように見えるが、性質が違う。
訳ありは、サイズ不揃いなど品質と関係ない理由のものなら買っていい。安いだけで中身は変わらない。ただし残り物をまとめただけのものが混じることもあるので、何の訳なのかが書かれていない商品は避けた方が無難だ。
切り落としは、個人的に当たった経験がない。
「魚屋なら鮮度抜群」は、もう成り立たない
かつては専門店に行けば間違いないという常識があった。だが今は必ずしもそうではない。期待して魚屋に行って外すことは、実際によくある。
見るべきは業態ではなく、目の前の魚だ。
血合いの色、目、体型、皮引き。この4つで判断すれば、スーパーでも専門店でも同じ精度で選べる。
まとめ:売り場でやることは4つ
1. 柵は照明の下から出して、血合いを見る(茶色は避ける)
2. 脂は皮と血合いの間の白い層で判断する
3. 一尾なら、目の透明度と「小顔・体高あり」
4. 水曜・日曜・祝日は避ける
POPも業態も、判断材料の一つでしかない。最後は自分の目で見る。それが一番確実だ。
18歳から水産業界。途中3年間、飲食店の厨房に立ち、現在は水産に戻って現役。売る側と使う側、両方から魚を見てきました。

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